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Aug.26.r6

コラム COAST TO COAST 9

9月のCoast to coast コラムは平川市にある、きむら果樹園5代目の木村央さんにナビゲートいただきます。
きむら果樹園は9/22(日)に開催されるオーナーズクラブの会場となる農園です。

profile l 木村央さん

木村家の長男として生まれ、幼いころから果樹農園を継ぐことを責務だと感じていました。弘前大学農学部を卒業後、青森県庁に入庁し農業改良普及指導員になったのも、県内全域におけるいろんな農家の生の声を聴いて学び、将来に活かしたいと思ったのがきっかけです。その後、農業改良普及指導員の業務を一定期間努めてから、新幹線が八戸駅から新青森駅まで延伸する際に県の観光局へ移動。観光は、まったく経験がなく、不安から始まった観光局での仕事でしたが、結果的に観光や情報発信、さらには県外事務所(東京・福岡)など、農業改良普及指導員だけでは経験できない幅広い業務を経験したことが今の木村さんの土台となっているそうです。私達から見て木村さんは「農業プロデューサー」というネーミングがピッタリな方です。

 

■県の観光局ではどんなお仕事をされていたのですか?

県外、国外へ向けて青森県の魅力をPRする活動がメインでした。

思い出深いプロジェクトは、東日本大震災の後、はじめて観光局へ異動した際に、JR東日本とタックを組んで行った「黒松の植樹」ツアーです。

言うまでもなく甚大な被害を受けた震災でしたが、海岸の防潮林(黒松)が漁船や大きな漂流物をせき止め、被害の軽減につながったという事実がありました。

そこで、東日本大震災の復興活動の一つとして、津波による被害を受けた八戸市・階上町、三沢市などの太平洋の沿岸に、「防潮林(黒松)」の苗木を植える植樹ツアーを企画したところ、全国からたくさんの方々が参加してくれて、海岸には新たな黒松が植えられました。この活動が転機となり、そこで得られた経験を土台に、同年夏、りんご+ヒバの植樹ツアーも実施したところ、風評被害などにより観光客が全く来なくなった被害地の東北・青森に、県外からの想像以上の参加者が来てくれました。この誘客活動を通じて、人は自分の楽しみや娯楽などを目的とするばかりではなく、困った人や地域を助けることを目的とした旅をもするのだと感銘を受けました。人にはいろんな旅の在り方があることを学んだ機会でした。

また、情報発信に特化した特殊チームに所属した際は、首都圏のマスメディアをターゲットに青森県の食や歴史・文化などの魅力を発信しました。

地元である青森県に住んでいても、青森県内全域の文化を広く知っている人はなかなかいません。

特殊チームの職員たちは、土日も関係なく、アンテナを高く張っていろんな地域に出向き、地域の人たちにと話し、その文化や歴史について深堀すると理解が深まり、その地域の魅力を肌で感じることができるのです。

マスメディアが私たちのネタをテレビや雑誌などで取り上げてくれるためには、どのような視点が大事なのかを常に考えていました。そこで、当たり前だと思っていた地元の「津軽桃」、「畑のホルモン文化」、「平川サガリ」などにようやく気付きました。あらためて、なぜ津軽に桃が根付いたのか、ホルモンやサガリを食べる食文化ができたのか。その疑問にぶつかりながら、必死に情報収集しさらに深堀りをして、コンテンツ開発と発信を続けてきました。根底にあるのは地元愛です。平川市はもちろん青森県の魅力を発信したい思いは今も変わりません。地元の人たちは当たり前と感じているものでも、県外や国外から見たら魅力的なものが沢山あると思います。私たちは地元の方たちが気づけていない魅力を取り上げ、それを発信し、新しい価値を創造するのが仕事でした。苦労はありましたが反響が大きければ大きいほど喜びも大きかったし、非常にやりがいのある仕事でした。今は農家に転職しましたが、そのベースは変わってないですね。

これからのビジョンをお聞かせください。

農業の魅力をもっと知ってもらうこと、美味しさをもっと知ってもらうことが一番の目標です。海外の方を招いて、青森りんごに触れてもらったり、小規模ですが輸出にも力を入れています。
ご縁がありJAL香港支店と「リンゴの木のオーナー契約」という企画をやっています。リンゴの木は私たちが管理し、月に一度、動画や写真を交えてオーナーにレポートを送っています。収穫した果実は梱包して香港のオーナーへ送り届けるシステムです。オーナー契約でリンゴの木を所有している方は現在20組。香港の方は所有することに価値を赴く傾向があり、とても好評です。また、香港のオーナーがいつ青森に遊びに来ても良いように、観光名所やオリジナルの食べログも配信し、飽きさせない事業展開を心がけています。昨年は香港からトータル6組の方がきむら農園に遊びに来てくれました。嬉しい反面、家族4人で運営している果樹園なので、猫の手でも借りたいくらい人手が足りないのも正直なところです。公務員時代から比べると個人事業は予想以上に大変ですね。分かっていたつもりですが、分かっていた以上に大変でしたね。今は家族はもちろん、県庁の元同僚、県内外の知人の支えの元、情熱を頼りに活動しています。

これからやりたい事業は沢山ありますが、もちろん全部はできないですし、やれる事、やれない事、やり切れることを考えて取捨選択している状況です。

まだ構想はぼんやりですが、想像して一番ワクワクするのは青森県内の方と結ぶ「リンゴの木オーナー契約」ですかね。自分が所有している木のリンゴが毎年届き、木の成長と共にリンゴの味も増していく。ある意味、私たちの楽しみの醍醐味をリアルにオーナーにも感じてもらいたい。自由に農園に来てもらって、木の成長を見てもらいたいし、農作業を楽しんでもらえるなら、摘葉・袋掛け・収穫などの体験型も検討したいと思っています。そういった意味でも今回のUHオーナーズクラブ開催は楽しみにしています。今回のイベントでUHオーナーさんを招いて、ご意見ご感想を伺えたなら、今後の構想の糧にしたいと思っています。

 

※スタッフから一言

9月22日(日)開催のユネストホーム、オーナーズクラブでは平川市きむら農園で津軽桃の収穫体験と試食、平川サガリと平川ホルモンのBBQを予定しています。平川文化と平川のソウルフード、木村さんのお人柄に触れていただく機会になれば幸いです。詳細については改めて公表させていただきます。