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Nov.3.r6
コラム COAST TO COAST 11
11月COAST TO COASTコラムは青森市在住 稲葉くみこさん(通称Qooさん)にナビゲートいただきます。夏は二週間、冬は一週間東京の事務所に出社する2拠点生活のQooさん。青森市の自宅から東京・八甲田・ときには各地の山岳に足を運ぶ生活や、その原動力を取材しました。
■ 青森が好きになったきっかけは何ですか?
山。青森が好きになった入り口は八甲田山です。当時勤務していたバートン(スノーボードメーカー)がバックカントリーカテゴリーを確立させるためにギアを作り始めたところでした。それでビッグマウンテンをフィールドに活躍していたプロスノーボーダーのクレイグ・ケリーと日本でのバックカントリーセーフティに関する啓蒙活動をしようと準備をしていて、その講習会をするためのフィールドを探していたんです。ちょうどバートンが八甲田山ガイドクラブの相馬隊長にスノーボードを提供していたこともあり、八甲田山荘とガイドクラブの全面バックアップのもと、八甲田山で講習会を開催させてもらったのがキッカケ。そこからどっぷり八甲田マジックにかかり、金曜日の仕事のあと夜行バスにのって青森へ。着いてそのまま山に入り、日曜日の夜行バスで東京に戻ってそのまま出勤する生活が何年も続きました。長野オリンピックの年からなので1998年。そこからずっと青森の冬に触れてきました。相馬さんとは今年で26年の付き合いということになりますね(笑)
■ 暮らすようになったきっかけは?
何年間も通っているうちに、「青森にアパートを借りてもいいよね」と思うようになり、必要最低限の設備の小さいアパートを借りました。それまでは八甲田に滑りに行くたびに大きなスノーボードバッグを宅配便で送ったり返したりしていたけど、関東圏の山に行くためのギアを東京に1セット残し、あとは青森に置いておけるようになったので楽になりましたね。
そうこうしているうちにコロナが蔓延し、出勤もNG、レジャーもNGで、狭い東京のマンションに閉じ込められて気が狂いそうになっちゃって。前々から青森移住を考えて土地を探していたのもあって、思い切って青森に移住したいと社長に相談しました。解雇かなって思ったら、1ヶ月に1回東京オフィスに出勤、あとは青森からリモートで仕事を続けてみれば?と言ってくださって。感謝しかありません。コロナは世界的災難だったけれど、私はコロナに後押しされて青森への移住を決めました。
東京のマンションを売って青森に家を持ちましたが、東京と行き来をしているせいか、いまだに自分の家という実感があまりないです(笑)。今まで借りていたアパートが一軒家になったくらいの感覚で。
■クーさんが思う青森の“楽しさ”や“魅力”とは?
きっと青森に住む地元の人にとっては当たり前のことかもしれないけれど、いま自分がいる青森ってすごく恵まれた環境なんだって実感させられます。青森の自然、環境、食べ物…。自分にとても合っているのです。
大型連休の関東甲信越は道も街もすごい人。それが青森だと自分のペースで楽しめるのがいいですね。激混みする紅葉シーズンのロープウェーもルートを選べば静かに景色を楽しめたり。
食べ物もおいしいものばかり。東京から青森に通ってた頃はお寿司だのご当地の有名店だのってなっていたけど、今では県内収穫の地場産食材の美味しさを家ゴハンでそのまま味わうのが好きです。魚介はもちろん、きみ(トウモロコシ)やリンゴ、東のサクランボや桃、西のメロンやスイカなど、なにしろ素材が新鮮で美味しい。あとは山菜の時期やキノコの時期にご近所さんが色々お裾分けしてくれるんですが、いただくもので四季が感じられるのも好きです。本州で唯一、日本海と太平洋に面している県。同じ県内なのに西と東でお天気も気候も違うから、美味しいものがいろいろ採れるんですね。
あとは人がとてもいい。周りの人達にとても恵まれています。通っていた頃と違い、いざ住むとなった時は町内に馴染めるかちょっと不安はあったけど、実際に人に触れてみるとそんな心配は不要でした。
バートンに勤めていたときは、いつも「バートンの」稲葉さん。山でも取引先などに会うことが多かったせいもあるけど、「バートンの」が付いてきて、仕事として会っている感じが抜けなかったんです。でも八甲田山ガイドクラブのみんなと出会った時、バートンで繋がっていたとはいえ、「おー来い来い!」って、人としてすごく歓迎してくれて。
震災の時、東北道が割れてその週に青森に行くはずだったのが行けなくなりました。東京のコンビニやスーパーから食料や物資が消えてすごく困っていたところ、やっと飛行機が飛んだので、思い切って「青森に行こうかな」って相談したら、「来い来い!来ちゃえ!」って。東京より青森のほうが絶対に被害が大きかったのに受け入れてくれて、帰るときには2Lのペットボトルがパンパンになるくらいお米を持たせてくれました。こんなにしてくれるの!?って驚いたし涙が出そうになるくらい嬉しかったです。気遣いや思いやりをすごく感じました。忘れない出来事です。
都内に住んでいた時、私の周りで東京で生まれ育った人はさほど多くなく、誰がどこ出身でどこから来たとか気にすることもなかったし、良い意味で無関心な感じがします。青森はその逆で(とくに今私が住んでいるエリアは)、この地で生まれ育った人が多く、県外から越して来るとすぐわかります。周りのみなさんは好奇心旺盛で親切。内にも外にも良くしてくれるのがとても心地良いのです。
■ 別の地方に移住は考えたりしましたか?
夏は登山で甲信方面に行くことが多く、いまでもよく行きます。でもなんで長野に移住しなかったのかと考えると、、、すでにたくさんのコミュニティーが出来上がっていたからかもしれません。雄大な山並みがすぐそこにあって、山麓にはおしゃれなレストランやバーがある。アプレスキーを楽しむ山好きにはもってこいな環境ですが、私はそれを求めていたわけではなく、青森に残されている余白が好きなんです。
青森に移住してすぐの頃は、東京の延長のような生活もしていたけれど、今は家でゆっくり仕事をしながら過ごす時間も好きで、天気が良ければパソコン持ってふらっと自然の中にキャンプをしに出かけたり。桜、新緑、夏のねぶた、それが終われば紅葉、そして大好きな冬。四季の流れを食材や肌で感じられるなんて贅沢ですね。
反面、その生活において心がけていることもあります。東京にいれば、仕事のあと友達とゴハンに行ったり、イベントに顔出してみたりと、やることや行くところがいろいろ用意されているけれど、青森では本当に自由でナチュラルで自分次第。あまりの心地よさに甘んじてしまわないよう、以前よりもいろいろと考えるようになりました。
■何か楽しいこと、ぜひ一緒にやらせてください。
春に八甲田で「スプリットボードツアー」というのをやっています。スプリットボード(スノーボードを2本に割ってスキーのように登れる)で登って、春の雪山をスノーボードで滑るという企画。雪山シーズンを長く楽しむための遊びです。スノーボードやスキーをしなくても、春にお弁当持ってスノーシューで雪の上をハイキングするのも楽しいですよ。
オーナーズクラブで毎年秋にイベントを開催しているなら、紅葉が美しい時期にオーナーさんとスタッフみんなで景色を楽しみながらのんびり山歩きなんてのも良いのでは?。青森の自然の良さを再発見する機会になるかも。大好きな八甲田でそういう企画を一緒にやれたら面白いですね!