Coast to coast

Jan.7.r7

COAST TO COAST : ACAC

【COAST TO COAST season24’】では、季節毎に少し視点を変えて“青森を楽しもう”というコンセプトで、青森に暮らす方から県外の青森好きの方まで、地場の文化や食べ物、やりたいことなどを取材してきました。2025年は青森の名建築に焦点を当てて、青森の魅力を発信していきます。
 

COAST TO COAST

– CTC2001
国際芸術センター青森
   

青森公立大学 国際芸術センター青森(ACAC)は、八甲田山麓のダイナミックな自然と特徴的な建築が生み出す環境を活かし、アーティスト・イン・レジデンス(滞在制作、AIR)、展覧会、教育普及を3つの柱として、現代芸術の多様なプログラムを発信するアートセンターです。設計は安藤忠雄によるものです。周囲の自然環境を生かし起伏に富んだ地形を壊さないように配慮し、建物を森に埋没させる「見えない建築」をテーマとし、谷沿いに橋が架かるようなイメージの直線型の創作棟と宿泊棟、さらにギャラリーや円形の屋外ステージを備えた馬蹄型の展示棟の3棟から構成されています。この独特の建築空間は、滞在するアーティストの新しい想像力をかきたて、また訪れる人にとって、刺激的な新しい芸術体験の場となるでしょう。

建物全体を自然の中に埋没させる「見えない建築」をコンセプトに、2001年12月の開館に先駆け同年11月に建てられました。宿泊棟・創作棟・展示棟と3つの建物と四季のアーケードは、機能を固定しない「がらんどう」の空間としてアーティストを刺激し、雪といった自然環境も含めて全体が展示空間となるよう意図されています。さらに安藤は一貫して「育てる」という言葉で、建築のつくり手の限界と使用する人たちの創造的な可能性についても語っています。

展示棟はカーブした壁をもち、窓からの自然光の入る特徴的なギャラリーだからこそ構想され・実現した作品も少なくありません。開館から変わらずアーティストの創造性を刺激してきました。一方、変わっていくこともあります。鏡のように磨かれたギャラリーの床には彫刻作品を固定した際に空いた穴や、天井に見える結露の跡など、その時の工夫や確かに経過した時間を建築は語っています。
ACACにはコレクション作品はありませんが、その時々に合わせて使用されてきた建築作品があると言えるのかもしれません。一人の建築家の作品としてだけではなく、使用する側の意図や、自然環境によっても日々変化が重なってきた場所なのです。

 

取材の日、青森市は連日の大雪で一面真っ白。取材チームのメンバーも、これだけの雪が積もった時に訪れたことはない。駐車場からACACにつながる道は、まるでトトロの森にお邪魔するような気分にさせる。やがて木々の向こうに建物が見えてきた。雪でピーンと張った空気と建築の緊張感で身が引き締まる。

「ランドスケープデザイン = その場所の環境や周辺の自然などを考慮し、建物が周囲の景観や環境に調和するようデザインする考え方。」

木を残す。木に隠れる。木よりも低く、こもった感じは自然の中に溶け込むのではなく、消す建築であると強く感じさせる。建築=空間と捉えることが多いが、場に感じたのは安藤さんの建築の真骨頂だと思う。「求められてつくるものと、生まれてくるものの魅力の違いは大きい」街中にある建築と森の中の建築。同じ建築でも建築手法はまったく違う。自然と建築の距離感をどうつくるか。自然に対しての想い、リスペクトがないとこのような建築にはならないだろう。

森の中は大人でも怖さを感じる。実際にこの日も雪がしんしんと降り積もり、人気もなく静まり返っていて、一人だと怖く感じただろう。ただ人がつくった建築があるだけで安心できる。主張はしないけど、存在感がある。たくさんではなくシンプルに。表現することは不安がつきまとうが、生まれてくるものの魅力は絶妙で、安藤さんの潔さや貫く強さを感じた。

列柱などの建築手法により奥行を感じさせるダイナミックさは見どころの一つ」

「これこそがこの建築のありたい姿だったのではないか」

青森公立大学国際芸術センター青森

開館時間:10:00〜18:00 ※展覧会は、10:00~18:00 ※ラウンジは、9:00~19:00
定休日:不定休
URL : http://www.acac-aomori.jp/
所在地:青森県青森市合子沢字山崎152-6
アクセス:JR青森駅からJRバスまたは青森市営バスにて約40分「モヤヒルズ、青森公立大学行」乗車、「青森公立大学」下車